「修理の現場から見た絹織物」 於: 洛風林 本社 |

工芸帯地 洛風林さんと勝山健史氏のご好意で、
染織品の修復についての、貴重なお話しを聞かせて頂くことができました。
お話をしてくださったのは、松鶴堂の城山好美氏。
国宝や重要文化財などの染織品を中心に、
長年にわたって修復のお仕事をしてこられました。
補修に必要な生地を求めておられた時に、奈良文化財研究所で、
勝山健史氏の塩漬け糸の生地と出会われたのは、当然とも言えます。
以前、勝山さんの長野県飯島の工房にお邪魔した時、
補修用の生地が、機に掛けられていたのが思い出されます。
極く薄い生地で糸が細く経糸の数が多くて、
綜絖が二枚、使われていたように思います。
あの時の薄い生地も、貴重な染織品の補修に使われたのだと思うと、
なんだか感慨深いものがあります。
城山氏と勝山氏のタグを組んだ仕事は、
こんな布がほしいというイメージから試行錯誤を繰り返し、
年間一反からスタートして、今に至られました。
お話しはかなり専門的なことにまで及びましたが、
城山氏がこれほどまでにこだわったお仕事をなさるのは、
今ある美しいものを美しいままに残し、
次の世代に伝えていきたいという熱い思いに尽きるようです。

これは4年前、和歌山県立博物館での”華麗なる紀州の装い”の折り、
勝山健史氏製作の布を用いて、松鶴堂さんが修理された能装束です。
「紺地唐花尾長鳥文様繍狩衣」
修理に使われた、繻子の補修布を手に取ってさわらせて頂きましたが、
それが写真では想像がつかないほどの、薄さ軽さ。
それでも、元の衣裳によくなじみ、しっかりした強度を保てるそうです。

写真右がbifore, 写真左がafter。
勝山氏製作の布で、裏地を取り替えられました。
この裏布の端切れも、薄い薄いものでした。
洛風林さんにお邪魔しお玄関を入った所に、見たこともない美しい絨毯が敷かれていました。
藍色に色とりどりの花の柄。
先代がルーマニアで手に入れられた、綴れ織りのウールの絨毯で、
裏を見せていただくと、表と変わらない端正な織り模様が見えました。
この生地の柄で、以前に帯を制作されたことがおありだとのこと。
洛風林さんの資料館”織園都”には、
この様な貴重な織物が豊富に収蔵されています。
* * *
すこし時間があったので、相国寺に足を延ばしてみますと、
思いがけず、蓮の花が見事に咲いていました。


