信州飯島の絹織工房 |

工芸帯地 洛風林さんのご好意で、
木曾駒ケ岳が望める長野県飯島の、勝山健史氏の工房を訪ねました。
そこで、勝山さんの糸作りを支えてこられた志村明氏の、
絹織物に関するかなり掘り下げたお話を御伺いすることができました。
志村氏は、
蚕を飼育して糸を紡ぎ、美しい布を生み出すことに、
これまで力を注いでこられた絹織物の研究家。
思いにかなう糸を創るため、
各工程で、さまざまなこだわりをもって、糸作りをなさっています。
その一例。
蚕の餌である桑の葉。
収穫しやすく品種改良された桑をやめ、
むかし、この飯島地方で用いられていた ”ねずみがえし” という
扱いにくく、収穫量も少ない桑に植え替えた上に、
蚕に与えるのは、最先端の何枚かを捨てて、その次の12枚のみ。
なんとぜいたくな!と言いたくなるような、こだわり様です。
志村氏は、桑畑、蚕、糸づくり等、
勝山さんの、飯島の工房になくてはならない方です。

勝山さんの桑畑も見せていただきました。
ずいぶん、広い畑です。

これが、”ねずみがえし”
おととし、お邪魔した時に、葉っぱを食べさせてもらいましたが、
アクがなく、しみじみとおいしい、蚕もよろこびそうな透き通った味。
* * * *
翌日、勝山氏の工房で、糸紡ぎや機織りなど見せていただきました。

繭を湯につけて糸をとっているところ。

ガラガラまわして、糸巻きに。


繭の中の、さなぎが見えてくると、あたらしい繭を、足します。

機織りをすぐ近くで見せて頂くことができました。
修復用の、透けるように薄い裏生地が機にかかっていました。
平織りなので、ふつう綜絖(そうこう)は二枚でいいのですが、
糸が細く、糸数がずいぶん多いので、綜絖が四枚。

写真ではわかりにくいかも知れませんが、
綜絖のちいさな穴に、一本ずつ糸が通っています。

これは機織りのための、小道具。

この日は、60キロもの部屋いっぱいの繭を塩漬けに。
塩漬けにすることによって、不純物を塩が吸い取り、
勝山健史氏の塩繭の糸は、驚くほどの光沢を放ちます。
私達も、塩漬けのお手伝いをさせていただきました。

大きくて形のちがう繭は、玉繭といって二匹の蚕がひとつの繭をつくったもの。
二本の糸がからみ、良い糸が採れないないので、
屑繭として、自家用の布などに、使われます。

藍染めの糸。
天然の藍で染めた布は、擦れると他のものに藍が移るのがふつうですが、
勝山さんの藍染めの糸で織られた布は、他のものに、藍が移りません。
ふつうの常識では考えられないことです。

工房のあちこちに、さまざまな道具が。

糸を巻き採る道具の後ろに見えるのは、黒板。
もともと保育園だった建物を、工房に使っておられます。

あっという間の二日間。
工芸帯地 洛風林さん、勝山さん、志村さん他工房の皆さんのおかげで、
又とない貴重な経験をさせて頂くことが出来ました。