<華麗なる紀州の装い> 於 和歌山県立博物館 |

和歌山県内に残された古い染織品の展覧会に、
最終日、工芸帯地 洛風林さんの一行と、ご一緒させていただきました。
「染め」や「織り」の染織品は、
年月による変化や、紫外線による影響をうけやすいため、
様々な文化財のなかで、もっとも弱く、いたみやすいものの一つです。
けれども、和歌山では、貴重な染織品が、
古くから神社や寺院に奉納され、宝物として保管されてきたことや、
あるいは神社や寺院でおこなわれる芸能などで用いられながら、
人々の手によって大切に守り、受け継がれてきたことなどから、
古い時代の染織品が比較的美しい状態を保ったまま、数多く残されてきたそうです。


これらの衣裳を修復するための生地や糸を作られた
洛風林さんの同人、勝山織物の勝山健史氏から、
お話をお伺いすることができました。
その中で、意外だったのは、
文化財の修復は、
修復箇所がまったくわからないようにする必要はなく、
今の技術でできないことは、次の世代へ橋渡しするのが、
文化財修復の役割とのこと。
傷んだ生地に糸を一本一本、織り込んでゆく……。
お話をお聞きしていると、気が遠くなるような作業です。

裏地は痛みがひどかったため、生地ごと、新しくされたそうです。
勝山健史氏は、修復の仕事に関わるなかで、
遠い昔の生地の美しさを見出され、
ご自身、長野県の飯島で、
美しくて"ちから"のある生地、生地を織るための糸、美しい糸のできる蚕、
そして蚕が葉を食べる桑の栽培にいたるまで、
手間暇おしまず、お作りになっています。
そうして出来た生地や糸が、古い布地の修復にたいへんよいので、
今回も、この依頼があったそうです。

この日は、帯に使う箔を作っておられる箔屋さんもこられていました。
弊店の四月の展示会にお越し頂いた方の中にには、
覚えていてくださってる方もおられるかと思いますが、
焼き箔 市松模様の 茶色の袋帯
なんともすごいとしか言いようの無い、箔をつくっておられます。
また、この箔を使って帯を織られる勝山氏、
そして、新しい意匠を考案し素敵な帯を創り出される
工芸帯地 洛風林さん。
気心の知れた、信頼感が
いいものを作る一助になっているのに、気付かされました。
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和歌山に早く着いたので、和歌山城へ。
将軍を輩出した、紀州徳川家。
建物は戦火を蒙り、鉄筋コンクリート造りです。


大阪城とは違う、石垣の組み方です。

展覧会のあとは、洛風林さんの一行と、紀州東照宮へ。
徳川家康の小袖など、紀州東照宮の染織品も、
今日の展覧会に、出品されていました。
紀州東照宮は、
左甚五郎の極彩色の彫刻など、ミニ日光の感ですが、
撮影禁止で、残念です。