千家十職 楽家の茶碗 -秘められた赤と黒の世界- |
晩秋の京都は、いたる処、見頃の紅葉で、
散策を楽しむひと、カメラを構えるひと、絵筆を持ってキャンバスに向かうひと……。
帰りに、足をのばして、北山通りで開催されている展覧会を観てきました。
初代の長次郎から、以来400年以上、当代のご当主 楽吉左衛門まで、
歴代当主の作品が、一堂に展示されていて、圧巻でした。
これまで、"楽"というと、
長次郎の作品に代表される様なイメージしか持ち合わせていませんでしたが、
全十五代のご当主、その人その人それぞれで、茶碗の形や色に個性があり、
"楽"と一口に言っても、こんなに違いがあるのだと、驚きました。
それぞれに、個性があって、おもしろいのですが、
やはり、千利休と深いつながりがあったと云われる、
初代の長次郎の茶碗が、群を抜いているようにおもいました。
長次郎の茶碗は三椀、展示されていて、
その三椀とも、おとなしい何の変化もない形の様に見えるのですが、
見ていると、とても心地よく、
じっとその場を離れないで、いつまでも見ていたい、
そんな不思議な力がある様に感じました。
ちょうど、大好きな着物や帯に見入っていると、
いつの間にやら時が過ぎてしまっていた、というのに似ています。
伝統を踏まえて意欲的に活躍なさっておられる、当代ご当主の作品展は
上京区の"楽美術館"で開かれているそうです。
二階の立礼席は極上の空間でした。
部屋に入るといきなり、大きな窓から、明るい紅葉が、目に飛び込んできました。
ここで、お抹茶を一服。
イラボ釉のお茶碗に、お茶の濃い緑がよく映えていました。
イラボは、還元で焼くと、緑色がまだらに現れるそうで、
その緑が、お抹茶の色と区別がつかなくなる、おもしろい演出でした。
楽茶碗は、轆轤(ろくろ)を用いず手捏ねで形造り、
小規模な内窯で、一椀ずつ焼き上げられるそうです。
この方法が、作者の個性をよくあらわし、
手の温もりやつくり手の心を、私達に伝えてくれるのでしょうね。
会場の表千家北山会館は、植物園の北向いです。